ムルマンスク便りVol.10


◇ちぇぶさん(第2期生)の留学体験記


 前回からはじまりました、ペンネーム・ちぇぶさんの海外生活を綴った留学体験エッセイ「オーロラの見える町から」昨年晩秋から今年夏にかけてムルマンスク経済法科大学に語学留学されていたときのドタバタ生活を楽しく紹介して戴いてます。

 結構ボリュームがあり、ユーモアタップリの連続体験記です。これが本当にあった話だから、おもしろい。情景を思い出しついニンマリしてしまいます。

 今度は第3話目。鉄扉と格闘した(?)お話を書いてくれています。みなさんも彼女の体験記を読んで、ムルマンスクがどういう町なのか妄想想像してみてください。(本人の了承を得ています。)


ちぇぶさんが格闘したDOMの
扉の前で。赤いコートを着た人
の左上にあるのがダマホン。


第3話 『ドアが開かない』

 ムルマンスクは北極圏でいちばん大きな町である。冬は雪がたくさん降る。私が彼の地に降り立った11月には、もうすでに道には雪が積もっていた。厚手のコート・防寒ブーツはもちろん、手袋、帽子も欠かせないアイテムだ。たしか、冬場の気温はマイナス10度からマイナス15度くらいだったと思う。いちばん寒いとマイナス20度くらいになるんだよ、と留学前の説明会で聞いていた。そのくらいだと、ほっぺたが寒さでピリピリしてくるよ、と教えられていた。こういう時は素手で鉄のものを触ってはいけない。皮膚がくっついてしまうからだ。

 でも実際は、私のほっぺたはマイナス5度くらいでも赤くなっていたと思う。しかし、寒さには慣れるものである。初めのころは、さすが北極圏!と恐れ入り、防寒ブーツはもとより、防寒コートまで買ってしまったが、いつしかマイナス10度くらいでは寒いと感じなくなっていった。そして、それは私がムルマンスクに来てから、そろそろ三月(みつき)になろうかという頃起こった。


  *  +  *  +  *  +  *  +  *  +  *


 その日、いつもと変わらずに起きて、朝食を食べ、余裕をもって家を出た。この頃の私は雪道が滑って歩きにくいので、かなり早くに家を出ていた。慌てると道中必ず転ぶのだ。玄関の鍵を閉め、隣の家との共同ドアの鍵も閉め、エレベーターのボタンを押す。一階に着いてエレベーターのドアが開いたとき、いつもと違う空気を感じた。

 
なんだろう?

 玄関前には何人かのロシア人がいる。へえ〜、この人たち、同じDOMに住んでいる人たちだ。普段はあまり顔を会わす機会がない人たちだが、けっこう住んでいるんだ、なんて思いながら、ドアへ行く。私のDOMには、"ダマホン"という仕組みの鍵がついていて、外から入る場合は鍵をもっているか、中から開けてもらうしか方法がない。逆に内側から外へ出る場合は横にある小さなボタンを押してドアをあける仕組みになっている。(ダマホンは日本でもマンションなどでよくみかけるシステムです)そのダマホンを開けるボタンを押す。ドアにグッと力を入れ、押した。が、開かない。あれ、おかしいな。もう一度やってみる。やっぱり開かない。DOMの共同玄関のドアは、私がどんなに力を込めて体当たりしても、うんともすんともいわない。そのとき私は悟ったのだ!なぜ、今日に限ってドアの前に人がいるのか。そう、みんなドアが開かなくて、外に出て行けないのだ!! 家の中にいて閉じ込められる、これは私にとってのびっくり初体験である。こんなことって、あるのね〜。

 
さすが、ロシア!おもしろい。

 なんて場合じゃないですね。さてさて、どうやって学校へ行けばいいのか。家に戻って、日本語教師たちに相談しようか、と思ったとき、ドアの向こう(つまり外)に人の気配が。中にいるこちらは、皆その気配を察して声を上げ、男の人はドアをドンドン叩いたりした。とはいうものの、頑丈な共同玄関のドアなので、外に音が聞こえているとは思えないけど。ダマホンを使う音がして、どこかの家を呼び出しているみたい。やがてドアが開く時のベルの音。そして、外でドアを引くのに合わせてこちらから男性がドアを押す。

 
開いた!!

 外に立っていたのはスキー帰りの少年。彼はドアの内側に多数の人を認め、目をまるくしていた。そりゃそうだろう。まさか中にこんなに人がいるとは思いもよらなかったはずだから。とにもかくにも、外から少年が開けてくれたので、私らは無事出勤・登校できた。このことを教訓に、何かあった時のために、少しは食料を買い溜めしておこうと思い、その日の帰りはいつもより多めに食品を買ってしまった。


  *  +  *  +  *  +  *  +  *  +  *


 そして次の日。なんとナントの難破船!
またもや共同玄関のドアが開かなかったのである

 ドアに体当たりして開かなかった時、またか、と思った。暫く待ってみたが、しかし、今日はあいにく中からも外からも人が来る気配がない。う〜ん、どうするかなあ。「ヒラケゴマ」と言ったら開くかしらなんて思ったけど、このままじゃどうしようもない。とりあえず、遅刻しそうだからSさんに連絡して学校に伝えてもらおうと考えた。家に戻ってSさんに電話をするが、出ない。おわっ、もう家出ちゃったんだ。こりゃ、困った。私は学校の電話番号を知らない。これでは学校や先生に連絡できないではないか。しかし、私はロシアに来て肝がすわったのかしらん。共同玄関のドアが開かない以上、外には出られない。遅刻は必然だ。だが、昨日だって出られたんだから、そのうちドアは開くだろう。

 
それまでは仕方ない、お茶でも飲んで待とう

、そう考えたのだ。台所でお湯を沸かしながら、ふと窓の外を見ると、人が歩いている!この窓の下は共同玄関の入り口だ。ということは、ドアが開くんだ!大慌てでブーツを履き、鍵を閉めて階下へ。再び、試す。今度は開いた。ちょっと力が要ったけど。ドアの向こうの雪がまぶしい。リンとした空気が私の鼻を満たす。

 この日、私は30分遅刻をした。学校へ着いた私は、下手なロシア語を駆使しながら、先生にドアが開かなかった旨を伝えたのだった。


【注】ドアが開かなかった原因は、寒さでドアの磁石がくっついてしまったようです。後日磁石のところに薄く紙が挟まれていたのでなんとなく分かりました。その後、ドアは修理され、たいして力を入れずとも開くようになりました。




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