ムルマンスク便りVol.12


◇ちぇぶさん(第2期生)の留学体験記


 前回からはじまりました、ペンネーム・ちぇぶさんの海外生活を綴った留学体験エッセイ「オーロラの見える町から」昨年晩秋から今年夏にかけてムルマンスク経済法科大学に語学留学されていたときのドタバタ生活を楽しく紹介して戴いてます。

 結構ボリュームがあり、ユーモアタップリの連続体験記です。これが本当にあった話だから、おもしろい。情景を思い出しついニンマリしてしまいます。

 今度は第4話目。鉄扉の次は電話屋さんと格闘した(?)お話を書いてくれています。みなさんも彼女の体験記を読んで、ムルマンスクがどういう町なのか妄想想像してみてください。(本人の了承を得ています。)


レーニン大通りとパリャールヌィエ・ゾーリ通りの交差点付近にあるブリヌイ屋さん。ブリヌイとはロシア風クレープのこと。地元ムルマンスクでは「行列ができる店」といわれるほど有名で、なくなり次第閉店してしまう「売り切れごめん」な店。
オススメはコンデンスミルクがかかったブリヌイで、40ルーブルくらい(紅茶付)


第4話 『電話屋さんがやってきた』

 それはまだ、私がムルマンスクへ行ったばかりのころ・・・。
 その頃、私たちのクバルチーラには、まだ電話がついていなかった。そんなある日のこと、ついに私たちのクバルチーラにも電話が設置されることになった。
 
 その日、日本語教師のMさんと一緒に、電話屋さんが来るのを待っていた。これがロシアだからなのか、そういうものなのか分からないが、なかなか来てくれない。そのうちMさんは用事があるので出掛けなければならなくなってしまった。ということは、私一人で電話屋さんを待つことになる。だが、もし電話屋さんが来てくれても、もちろん相手はロシア人。会話はロシア語のみである。

 
えっ、どうするの?
 どう相手すればいいの?


 電話屋さんが日本語をしゃべれるわけはない。私もロシア語しゃべれるわけはない。これは困った。するとMさん、携帯電話を置いていってくれるという。そして、電話屋さんが来て、なにか話が通じず困ったことになったら、パリャールナヤ・ズベズダーのA氏に電話するように、と言った。電話をすれば、A氏が駆けつけてくれる手筈になっていたのだ。A氏に電話をするということすら不安だったけど、とりあえず携帯の使い方を教えてもらう。「なるべく早く帰ってくるからね」そう言ってMさんは出掛けて行った。かなり心細い留守番である。私としては、Mさんが帰ってくるまで、電話屋さんが来ないことを祈るばかりである。でも、こういう時って、絶対にそうならないのよね。そして、案の定、電話屋さんはやってきた。

ビリリリリリリリリリ・・・・・

、と呼び鈴が鳴る。「どなた?」このロシア語の台詞はチェブラーシカを見て覚えた。「○○××テレフォ」みたいな返事が返ってきた。電話屋さんだ!ドアを開ける。そして彼を招き入れた。電話屋さんはそんなに若くない。初老にさしかかったところ。きっとベテランだろう。眼鏡の奥からギロリとにらむ。緊張している私は玄関でスリッパを出すのを忘れそうになったような気がする。なにしろ日本と違って、三和土(たたき)みたいなのはないので。電話を取り付けてもらいたい台所へ案内する。取り付け口はあるので、配線コードをつなげばいいようになっている。そうしたら電話屋さんにダーっとロシア語をまくしたてられてしまった。

 
???
 なんて言ってるの?


 頭の中はクエスチョンマークだらけ。と、彼が身振りで何か四角い箱のようなものをつくっている。電話機そのもの以外に、なにか必要なものがあるらしい。もしかして、これ?

 そばにあった袋の中身を彼に渡す。ほっ。どうやらそうだったらしい。すると電話屋さんは自分のカバンをガサゴソして、道具を取り出した。長い長いコードが出てくる。モジュラーケーブルというやつだろうか、電話機と取り付け口のソケットを繋ぐ。それからコードをびよよーんとのばし、壁に沿ってコンコン金具で留め始めた。

 
どうしよう。見てなくていいのかな?
 でも、他人をそんなに信用しちゃいけないし。ましてや外国の人だし。


 そういえば以前、わたしがとある国のホテルでお湯がちゃんと出なかったとき、ジェジュールナヤのお姉さんが工事の人を連れてきてくれて、工事がちゃんと終わるまで見届けてたっけ。ということは、やっぱちゃんと見ていた方がいいのかしら。それに、ちょっとどんな風にするのか興味あるし。電気屋さんとしては見ていて欲しくなかったみたいだが、(見てなくていいよ、みたいなこと言われた)興味があった私は工事を見させてもらうことにした。コードはネズミが歩くように、壁の隅っこを伝って玄関の外へ。お隣との共同玄関のところに馬の絵が飾ってあるのだが、そこを開いてゴソゴソ。やおら、電話屋さんが出て行ってしまった?

 この場合、お隣との玄関の鍵、閉めちゃまずいんだろうな。(後で分かったことだが、下の階からコードをひっぱりあげなければいけないらしい)しばらくいなかったが、また急にもどってきて、何やら言ってくる。うーん、う〜ん、わかんない。私に全く通じていないことは電話屋さんも分かってくれた。そうそう、こういうときこそA氏に電話だ!

 そういうわけで、電話をかける。そして、A氏と電話屋さんとで直接話してもらった。一度はこれで済んだ。それからまたしばらくガザゴソしていた電話屋さんだが、また何か問題があるらしい。もう一回電話して、とリクエストされた。で、またかける。どうやらなにかややこしいことがあるらしく、A氏がこっちにやってくることになった。

 しかし、A氏が来るまでは、早くても10分はかかる。とりあえず、立ったまま待っているのもなんだから、電話屋さんに椅子を勧める。どうすれば、どうコミュニケーションとればいいのだろう。さっきまでは、電話屋さんは仕事をしていたわけだから、声かけないで見ているだけでもなんの不自然もなかった。しかし、今はなにもしていない。手持ち無沙汰である。

 
どうしよう。
 あ、そうだ。
お茶勧めてみよう。

 確か教科書にお茶勧めるときのフレーズが書いてあった。部屋へ行って教科書を取ってくる。これこれ、これよ!さっそく教科書見ながら言ってみる。

 しかし、
あっさりと断られた。
 
またもや気まずいような沈黙・・・。(この沈黙が気まずいと感じるのは日本人だからだろうか)

 そしてA氏はまだ来ない。うーん、う〜ん。今思えば、とーっても恥ずかしいんだけど。この時の私は、そんなこと考えも及ばなかった。それよりも、この沈黙をなんとかしようと必死で考えていたのだ。
 そして、

 そうだ!せっかくネイティブのロシア人がいるんじゃん。
 
私の発音のおかしいところを訂正してもらおう!

 そう考えたのだ。しかし、「今からロシア語読みますが、発音の変なところがあったら直していただけますか?」なんて言葉はロシア語で言うことが出来ない。そこまで難しい文章はしゃべれない。そこで、実力行使あるのみ!難しい文章じゃ、ぜったいつっかえつっかえになってしまうのは分かるから、数字を読むことにした。数字を書いてあるページを開く。電話屋さんにそのページを見せながら日本語で、「おかしいところあったら、正してください」と言った。そして、ひとつひとつ指でさしながら、発音していく。最初は「?」としていた電話屋さんだったが、分かったらしい。おかしい発音のところは電話屋さんが言い直してくれる。それを真似する。そして、また続ける。しばらくそれをしていた。するとドアを開ける音が。なんと、Mさんが帰宅してくれた!ほーーーーーっとした。そしてMさんにA氏がいまこちらに向かっている途中だろうという事情を話す。やがてA氏が到着した。

 結局、なにかまだ足りないものがあったらしく、電話屋さんは次の日も来ることになった。

 手持ち無沙汰だったとはいえ、電話屋さん相手に発音練習してしまった留学生は私くらいだろう。お恥ずかしい。電話屋さんにとってはいい迷惑だったかな。しかし、もし、このことが電話屋さんの一家や職場での団欒のネタになってたら、少しは救われるかもしれない。

【編集局より】
 余談ですが、電話線といえば、ムルマンスクで吹雪が続いた時があって、いかにもか弱そうな電話線が切れてしまった経験があります。電話が不通だと本当に不便ですね。
 それからその後電話線は直ったのですが、暫くして同じアパート内の別の部屋(クバルチーラ)と電話線がどういうわけか一緒になってしまいました(電話番号は勿論違います)。つまり呼び鈴に応じて受話器を取ると、私と相手と、それと同じアパートに住むもう1人の住人の 3者電話 をするはめになってしまったのです。
 この状態に暫くすると慣れてしまい、修理してもらおうという気もなく、帰国まで3者電話を楽しんで(?)いました。なんか盗聴しているスパイのようでした。(^^;




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